新築案件が増えている一方で、現場を管理できる技術者が足りない。
一級建築施工管理技士などの有資格者や、経験豊富な現場管理者の数には限りがあります。
そのため、どの現場に、どの技術者を、いつ、どの組み合わせで配置するかは、建設会社にとって重要な経営判断になります。
一方で、多くの現場では、工程表や人員配置をExcelで管理し、技術者の経験や力量も担当者の記憶や個別資料に依存していることがあります。
本記事では、建設・不動産開発領域の企業向けに、技術者人員配置最適化システムの設計支援と導入定着支援を行った匿名化事例を紹介します。
相談内容
相談企業では、新築案件の増加に伴い、現場を管理する技術者の配置が難しくなっていました。
現場ごとに、着工日、竣工日、工程、物件規模、立地条件、安全性の要求水準が異なります。
一方で、技術者側にも、保有資格、経験年数、得意領域、担当可能エリア、現在の担当案件、能力レベル、育成状況などの違いがあります。
これまでは、Excelのガントチャートを使いながら、担当者が手作業で工程と人員配置を調整していました。
また、技術者の力量を可視化するための能力マトリックスも作成中でしたが、まだ運用に乗り切っていない状態でした。
主な相談内容は次の通りです。
- 技術者情報をデータベース化したい
- 資格や能力レベルを見える化したい
- 新規工事の着工日・竣工日をガントチャートで管理したい
- 物件条件と技術者能力を照らし合わせたい
- 現場への配置候補を自動で出したい
- 高スキル者が不足する場合、中堅技術者を複数名組み合わせるなど柔軟に配置したい
- Excel管理から脱却したい
- 導入後に現場管理者が使い続けられる運用にしたい
BizDXAIでは、この相談に対して、いきなりAIに配置を決定させるのではなく、まず配置判断に必要な情報を整理し、管理者が判断しやすい配置候補を出せる仕組みを設計する方針を提案しました。
課題
この案件の本質は、単に人員配置システムを入れることではありません。
本当の課題は、工程、現場条件、技術者能力、稼働状況が分散しており、配置判断が属人化していることです。
1. 技術者の情報が配置判断に使える形になっていない
資格情報や経験年数はあっても、それだけで最適な配置は決められません。
実際には、次のような情報が必要になります。
- 保有資格
- 担当可能な工事種別
- 経験した物件規模
- 安全性が求められる現場の経験
- 新人・中堅・ベテランなどの能力レベル
- 現在の担当案件
- 担当可能期間
- 育成対象か即戦力か
- 現場責任者として任せられるか
- 複数名体制で補完できるか
これらをExcelや個別資料で管理していると、配置検討のたびに確認作業が発生します。
2. 工程表と人員配置が分断されている
新規工事の着工日、竣工日、工程期間は管理されていても、それが技術者の稼働予定と連動していない場合があります。
工程表は工程表、人員表は人員表として別々に管理されると、次のような問題が起きます。
- 技術者の重複配置に気づきにくい
- 着工時期が重なると調整が遅れる
- 特定のベテランに負荷が集中する
- 新人や中堅の育成機会を計画しにくい
- 将来の技術者不足を早めに把握できない
人員配置を最適化するには、工事スケジュールと技術者の稼働予定を同じ画面で見られる状態が必要です。
3. 能力マトリックスを作っても運用に乗りにくい
能力マトリックスは有効ですが、作るだけでは定着しません。
評価項目が細かすぎると更新されなくなり、逆に粗すぎると配置判断に使えません。
重要なのは、現場の配置判断に必要な粒度に絞ることです。
たとえば、次のような観点です。
- 単独で現場を任せられる
- ベテランの補佐があれば担当できる
- 中規模案件なら担当できる
- 安全性の要求が高い現場は経験者と組ませる
- 育成目的で配置したい
- 特定領域の経験を積ませたい
能力マトリックスは、人事評価のためだけではなく、配置判断に使える形にする必要があります。
4. AIや自動化に過度に任せると現場に受け入れられにくい
建設現場の人員配置には、数値だけでは判断できない事情があります。
現場の難易度、施主対応、近隣対応、安全管理、技術者同士の相性、育成方針なども関係します。
そのため、AIやシステムが自動で最終決定する設計は適していません。
最適なのは、システムが配置候補と理由を提示し、最終判断は管理者が行う形です。
提案した解決方針
BizDXAIでは、この案件を「人員配置の自動化」ではなく、「配置判断を早く、正確にするための業務設計」として整理しました。
目的は、現場管理者の判断を置き換えることではありません。
判断に必要な情報を集め、候補を比較し、無理のある配置や過負荷を早めに見つけられる状態を作ることです。
Phase 1:技術者データベースを整備する
最初に、技術者情報を登録・更新できるデータベースを設計します。
登録項目は、配置判断に使うものに絞ります。
- 氏名
- 所属
- 保有資格
- 経験年数
- 担当可能な工事種別
- 担当可能エリア
- 能力レベル
- 得意領域
- 育成ステータス
- 現在の担当案件
- 稼働可能期間
- 過去の担当現場
- 注意事項
この段階で重要なのは、完璧なデータを最初から作ろうとしないことです。
まずは配置判断に必要な最低限の情報から始め、運用しながら更新項目を増やしていきます。
Phase 2:工事スケジュールとガントチャートを整備する
次に、新規工事の情報を登録し、工程をガントチャートで見える化します。
登録する情報は次の通りです。
- 工事件名
- 物件種別
- 物件規模
- 着工日
- 竣工日
- 主要工程
- 必要技術者数
- 必要資格
- 安全性の要求水準
- 難易度
- 担当エリア
- 優先度
これにより、どの時期に、どの現場で、どのレベルの技術者が必要になるかを見える化できます。
Phase 3:能力マトリックスを配置判断に使える形へ整理する
能力マトリックスは、細かい評価表ではなく、配置判断に使える分類へ整理します。
たとえば、次のようなレベル設計です。
- レベル1:補助業務中心
- レベル2:中堅技術者の補佐で担当可能
- レベル3:標準的な現場を担当可能
- レベル4:難易度の高い現場を担当可能
- レベル5:大型・高難易度案件を主担当として対応可能
このように整理すると、物件条件と技術者能力を照らし合わせやすくなります。
また、単純に高スキル者を配置するだけでなく、中堅技術者を組み合わせる配置案も検討しやすくなります。

Phase 4:配置候補を自動提案する
技術者DB、工事スケジュール、能力マトリックスが整った後に、配置候補の自動提案機能を設計します。
自動提案では、次の条件を考慮します。
- 必要資格を満たしているか
- 担当可能期間が合っているか
- 現在の担当案件と重複しないか
- 物件規模に対して能力レベルが合っているか
- 安全性の高い現場に経験者を配置できるか
- 高スキル者が不足する場合に補完体制を作れるか
- 特定の技術者に負荷が集中していないか
- 育成目的の配置が可能か
ここでのポイントは、1つの正解だけを出すのではなく、複数の配置案を提示することです。
たとえば、次のような形です。
- 案A:ベテラン1名を主担当にする安全重視案
- 案B:中堅2名を組み合わせる負荷分散案
- 案C:新人を補助配置する育成重視案
管理者は、システムが提示した案を見ながら、現場事情に合わせて最終判断します。
Phase 5:導入定着を支援する
この種のシステムは、導入して終わりではありません。
現場管理者や管理部門が使い続けられるように、運用ルールを整える必要があります。
BizDXAIでは、導入定着に向けて次の支援を行います。
- 技術者情報の更新ルール作成
- 新規工事登録のタイミング整理
- 能力マトリックスの見直し周期設定
- 配置候補の確認フロー設計
- 配置決定後の承認フロー設計
- Excelからの移行ルール整理
- 現場管理者向けの操作説明
- 初期運用時の改善点洗い出し
- 定例レビューの設計
特に重要なのは、最初から全社展開しないことです。
まずは一部部署や一部案件で試し、現場の使い方に合わせて画面や項目を改善していく方が定着しやすくなります。
技術構成の考え方
この案件では、技術者DB、工事DB、配置ルール、ガントチャート、配置シミュレーション、管理画面を組み合わせた構成を想定しました。
技術者DB
技術者の資格、経験、能力、稼働状況を管理します。
配置判断に不要な情報を増やしすぎると更新負荷が高くなるため、最初は最小限の項目から始めます。
工事DB
工事件名、期間、物件条件、必要資格、必要人数、難易度を管理します。
工程表と連動させることで、将来の人員不足を早めに把握できます。
能力マトリックス
技術者の力量を配置判断に使える形で可視化します。
単なる評価表ではなく、どの現場を任せられるか、どの組み合わせなら対応できるかを判断するためのデータとして扱います。

配置最適化ロジック
配置候補を出すロジックでは、資格、能力、稼働状況、現場条件を組み合わせます。
AIや最適化アルゴリズムを使う場合でも、最終決定は人間が行う設計にします。
これにより、現場事情を無視した配置を避けられます。
ガントチャート
工事スケジュールと技術者の稼働予定を同じ画面で確認できるようにします。
重複配置、空き状況、繁忙期、特定技術者への負荷集中を見つけやすくなります。

管理画面
管理者向けには、次のような画面を用意します。
- 技術者一覧
- 資格・能力マトリックス
- 工事スケジュール
- ガントチャート
- 配置候補一覧
- 配置シミュレーション
- 負荷状況
- 未配置案件
- 承認待ち配置
- 配置履歴
これにより、Excelでは見えにくかった人員配置の全体像を把握できます。
導入で期待できる効果
このような人員配置最適化システムを導入することで、次の効果が期待できます。
- Excel管理から脱却しやすくなる
- 技術者の資格・能力・稼働状況を見える化できる
- 新規工事の配置検討が早くなる
- ベテラン技術者への負荷集中を把握しやすくなる
- 中堅技術者を組み合わせた配置案を検討しやすくなる
- 育成目的の配置を計画しやすくなる
- 配置判断の属人化を減らせる
- 工程と人員配置を連動できる
- 将来の技術者不足を早めに把握できる
- 導入後も現場に合わせて改善しやすくなる
特に重要なのは、配置を自動化することではなく、配置判断に必要な情報を同じ画面で見られるようにすることです。
BizDXAIの考え方
BizDXAIでは、AIやシステム導入そのものを目的にしません。
目的は、現場管理者の判断を早くし、技術者不足による無理な配置を減らし、案件増加に対応できる体制を作ることです。
建設現場の人員配置は、単純なシフト表ではありません。
資格、経験、工程、安全性、現場難易度、育成、負荷分散など、多くの条件が関係します。
だからこそ、最初から完璧な自動配置を目指すのではなく、技術者DB、能力マトリックス、工事スケジュールを整え、配置候補を比較できる状態を作ることが重要です。
AIは、現場管理者の代わりに責任を取るものではありません。
配置判断の材料を整理し、より良い選択肢を早く出すための補助者です。

まとめ
建設現場では、案件増加と技術者不足が同時に起きると、人員配置の難易度が一気に高まります。
Excelのガントチャートや担当者の経験だけに頼った管理では、重複配置、負荷集中、育成機会の偏り、将来の人員不足を見落としやすくなります。
BizDXAIでは、技術者DB、資格・能力マトリックス、工事スケジュール、ガントチャート、配置候補自動提案を組み合わせた人員配置最適化システムの設計支援と導入定着支援を行います。
重要なのは、システムにすべてを任せることではありません。
現場管理者が、根拠を持って早く判断できる状態を作ることです。
技術者不足、Excel管理の限界、配置判断の属人化に悩んでいる場合は、まず現在の配置業務と技術者情報を整理するところから始めるのが現実的です。
無料DX診断では、現在の人員配置業務、技術者情報、工程管理、能力マトリックス、システム化できる範囲を整理できます。



